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ポジショナルプレー

ポジショナルプレーとは、ペップによると「ピッチ上のどこにボールがあるかを踏まえて、選手たちが正しいポジショニングをしていこうとする考え方。これを実践してシステムを機能させるためには、ディシプリンと思考能力の速さが必要になる」だそう。田邊さんの解説(*)がめちゃくちゃわかりやすい。この視点でみると、チャンピオンズリーグがよりおもしろくなる。

◯数的優位、質的優位、位置的優位
「ポジショナルプレーの議論では、ピッチ上には3種類の『優位性』があるとされる。いわゆる『数的な優位』、『質的な優位:選手のクオリティがもたらすアドバンテージ』、そして『位置的な優位性:ポジショニングの組み合わせがもたらす効果』だ」(*)
バルサやレアルのようなチームでさえ、個人は味方のサポートなしでは崩せない。ガチガチに守られて囲まれても確かに突破できるがハイテンポなリズムでボールを受けたほうがより精度はあがるし、プロ野球の大谷がネクストバッターサークルでピッチャーにプレッシャーを与えたように、メッシやロナウドの存在が守備のバランスを崩したりする。しかしおもしろいのは、すでに試合前からわかっているこうしたプレーヤーは分析されていて(**)ほとんど完璧に封じられ(CL 2nd leg バイエルン戦でロナウドはほとんど仕事をさせてもらえなかった)得点が生まれるシーンは左サイドバックのマルセロがペナルティーエリアのなかにいたり、センターバックのジューレが右サイドを攻め上がってハメスのアシストをしたりしている。なぜジューレが中に折り返しているんだ!レアルのディフェンスはそうとう混乱したに違いない。さんざん後ろから上がってくる選手をケアしていたモドリッチもこのときばかりは外していた。崩すときは均衡状態からの逸脱による。もちろん質的な優位で個人が突破することもあるがフリーを作り出すという意味では「ありえないポジション」の位置的な優位性が観ているものを興奮させる。

◯攻撃と守備の切り替えの早さ
再び田邊さんの記事からの引用「守備と攻撃を表裏で捉えるアプローチは2002年頃から顕著になり、コレクティブ・カウンターや5秒ルール、ゲーゲンプレスなど、様々な形を取って進化してきた。これに伴って、ポジショナルプレーの方法論も、守備でも攻撃でも優位性を確保するものに進化し、さらに精緻化されてきた。」(*)

守りながら攻める。ボールを奪った瞬間に攻撃のスイッチが入る。めまぐるしく攻守の切り替えが変わる。それは「イージーなミスではなくぎりぎりのところを攻めていてたまたまそれがミスになっているだけ」と解説の清水さんも言っていた。言葉を変えれば技術のミスではなくアイデア(選択)のミス。連動しているといえば簡単だけど選手個人の戦術理解と意思疎通、ゲームのなかでの応用。いわゆる第三の動きなんかはありとあらゆる局面でつくられているのだけど、それ以外にも型はあるようにみえる。ダイレクトプレーが連続する場合はボールに触れていなくても動き出していなければ間に合わないし、ボールがくるまえにいくつかの選択肢をもっておかないとダイレクトでいなすことはできない。展開があまりにはやい。どこまでが事前に決めていたことでどこまでが瞬時の状況判断なのか。それすらわからないくらいにボールがまわされる。スタジアム全体で大きな鳥かごをやっているかのよう。ボールが動くというより人にボールが集まり、敵を動かしている。現代サッカーがどういう方向に進もうとしていて何が最先端なのか、チャンピオンズリーグはそれが顕著にあらわれる。
* Nunber Web 2018.2.17 田邊雅之「ポジショナルプレー、これが決定版。グアルディオラに直接聞いてみた。」

http://number.bunshun.jp/articles/-/829947

** 月刊フットボリスタ第54号
https://www.footballista.jp/magazine/42074「監督の役割がしばしば重要になり過ぎていると思う。われわれ選手のフィジカルのレベルが高くなり過ぎてディフェンスをドリブルで抜くことは、メッシとネイマールを除けば今や至難の業で、ルイス・スアレスロナウド、ベイルですら抜けなくなっている。フィジカルのレベルが頂点に近いところに達している。マイクロチップを胸につけて練習し、選手間の距離、走行距離、最高スピードを管理している。これ以上フィジカルコンディションをあげるのは無理だと思う。」元スペイン代表のシャビ・エルナンデスはこう語っている。