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ファールの考え方

イングランドのサウスゲート監督は「NBAの試合で見られるピック・アンド・ロール(ボールを持った選手をマークするディフェンダーを他の選手がブロックし、そこからプレーを展開する戦術)」をサッカーに応用したという記事(*)がでていた。
今大会、イングランドコーナーキックフリーキックからの得点はグループリーグで4点。ベスト4までの決勝リーグで1点。明らかにプランどおり。しかも斬新な。計画的得点に思われる。サッカーは他のボールゲームに比べるとコートが広く時間も長いため、ひとりあたりのスペースが広く与えられ、走行距離も多いが、局所的には密集してスペースがないこともあり、他のスポーツと似ている戦術が使えるともいえる。ポジショニングはアメフト的だし、セットプレーはバスケ的。
動的に動くゲーム中と静的なセットプレーは別のものとして、切り分けて考えられる。しかも静的なほうはよりプランに忠実に再現できる。かつて、日本代表はセットプレーからでしか点を取れないと批判されたこともあるが、それはその通りで、チームの動的な戦術とは別に、静的な戦術は組み立てられるからだろう。PK戦なんてどのチームでもほぼ実力差はない。なのでスコアレスにもちこんで、セットプレーからの一撃でしとめるみたいなこともありえるし、そこの精度をあげることができればそれだけ勝利に近づくともいえる。
逆に言えば、ファールマネジメントも重要で、動的なゲーム中から静的なセットプレーはうまれるわけで、その接続部分のファールをどう考えて守るか。あたりまえだが、必要なファールと不必要なファールがある。ペナルティエリアの近くでは安易にファールはできないし、逆に必要なファールを瞬時にもしくは事前にどこまで決めておくか。イエロー覚悟でもとめなければならないシーン、流れを切らなければいけないシーンはどうしてもある。これは個人のサッカーセンスによるところもある。また、ファールは狙ってとれないから審判との駆け引きもまた考えなくてはならない。審判もどのラインで笛を吹くかみたいなことは、均一にすべきことはわかっていながらゲームごとにやっぱり違う。さっきのこのプレーで笛が吹かれないならここまでは大丈夫なんだなと、選手は常に考えている。実際ユニホームを引っ張っても吹かれなかったり、わざとぶつかりにいって敵は何もしていないのにファールと笛を吹かざるを得ないプレーもある。
審判側は主審ひとりじゃあまりに負担が大きいため、VARという複数人のジャッジ、改めての確認というシステムを持ち込んだが、これは選手がそれだけ巧みになってきていることを示していると思う。セットプレーを綿密に組み立てているイングランドは、ディフェンス面では極力ファールをさけてボールを奪っている。必要なファールはとりにいき、不必要なファールはしない。スウェーデンとの実力差があったとはいえ堅固な試合運びをした。クロアチアはロシアに延長後半セットプレーから追いつかれている。意図しないかつ不必要なファールがほとんどだとは思うが、セットプレーの起点となるファールをチームとしてどう意識しているかも見方のひとつとして興味深い。

*)2018.7.4 WSJ 「W杯イングランド代表、躍進の裏にNBAの戦術 」
http://jp.wsj.com/articles/SB12230827600627663439504584325422430767140