なにそれ経営者のブログ

仕事と彼女と人生観

無秩序の美しさ

Scary Beauty…開始5分ほどは、雑音というには乱暴すぎるけど、心地よい音楽でもなく、それでも、なぜかノイジーに感じない音が鳴り響いていて異様な光景を目の当たりにした。何かしらの規則性をもっていながら(セル・オートマトン的に変化させたアルゴリズムらしく)自律的に動いているところもあり、だからこそ無機質でも有機質でもない音たちがそこでうまれていたのだと思う。混乱、超越、カオス…いろいろと形容されるけど確かにそうとしか言いようがなくて、少なくともぼくには何が起きているのかがわからなかった。でも不思議なことに、ぼくはその音を、そのリズムを、感じることができた。わからないものに感動できるという経験はすごく不思議なことで、身体が反応するのを理性が追っかけていく。よくわからないけど涙がでたとか、感情においても理性にコントロールされていない意味での”本当の”感情がある。感動するのはそこに生命があるからかもしれない。池上先生は「複雑なメトロノームを作っても面白くない」とおっしゃっていた(****)。数式で表せれるものは想像を超えない。ゆらぎとかズレとかなにか違和感を組み込むことで機械が人間にぐっと近づくことがある。今回は「肩を上下させる動き」が息をしているようにみえることに気づいたことから、一気にオーケストラと指揮のコミュニケーションが進んだようだ(オーケストラにおいては指揮者の呼吸がとても重要らしい)。相手の呼吸は無意識のうちに合わせている。そういえば、宇多田ヒカルが曲づくりの過程で、本を読んで泣きまくっているけど、どこかでこの涙はどこからきているのかと客観的に探っている自分もいると言っていた。そこに触れることでうそのない感情をつかむ。それは自分の中にしかなく、できあがった歌を聞いてもらうしか説明のしようがないと(*)。池上先生は、鳥から飛行機を引いて残ったものに生命の自立性があるとおっしゃっている(**)。ちなみに今年の人工生命国際学会のテーマは「BEYOND AI」だそう(***)。膨大なデータ処理ができるようになり、システムの複雑さを犠牲にすることなく、モデルを理解することができる時代になった。そのなかで人工知能は人工生命の一側面でしかなく、科学者たちはむしろ生命のほうに関心が移っている。機械の体に生命はやどるのか。DNAがなくても生命はやどるのか。今回の実験的な試みは、人間の生命にかかわるような理解が及んでいない部分に「まだなにかある」ことを感じさせられるものだった。少なくとも感覚的にはうけとめている(ぼくたちがみつけにくく忘れやすい)ところにどうにか到達しようというチャレンジは本当に感情を動かされる。
* 2018.7.16 NHK プロフェッショナル仕事の流儀 宇多田ヒカルスペシャhttp://www.nhk.or.jp/professional/2018/0716/index.html
** 2018.7.21  bound baw「ALIFEは科学界のエレクトロファンクになるか?創造的進化とHIPHOP!池上高志×宇川直宏http://boundbaw.com/inter-scope/articles/18
「飛行機は鳥が空を飛べる構造を観察して発明された技術ですが、では飛行機を見て鳥が作れるかというとそうではない。その間には何があるのか、鳥から飛行機を引いたら、残っているものこそ、飛翔への欲望であり、生命の自律性である。その視点から新たな技術を発想することもできるとぼくは思うんです。技術の効率性や最適・最大化を求める中で、ぼくたちが見落としてきたものは必ずあって、その大部分はアートや音楽の中に回収されていると思います。」
*** ALIFE 2018(人工生命国際学会)
http://2018.alife.org/

***** Scary Beauty アフタートーク

http://www.fsight.jp/articles/-/44011