なにそれ経営者のブログ

仕事と彼女と人生観

科学をどこまで信じるか

NPでおもしろい記事があったので抜粋。

経済学者トーマス・カリアー先生のコメント。
「経済学にも科学と同じく基本法則が存在するなら、それは人間の行動原理に関わるものであるべきだが、今のノーベル経済学賞は『経済を扱う科学』を対象にしている。経済学の理論のほとんどは、物理など科学の公式を模倣して作られており、理論的な正しさが必要以上に強調される結果、現実の経済を扱う学問ではなく、架空の世界に関わる学問になってしまった。今の経済学賞受賞者の多くは、規制のない自由な市場に信頼を寄せる自由主義経済学者であり、フリードマンに始まるシカゴ学派に偏重し過ぎている」

多摩大学の堀内勉先生のコメント。
「本来は人間的であるべき経済活動から人間的な側面や価値観を取り去り、ただひたすら形式的な理論だけを追求するようになってしまったのが今の金融の姿で、そのためにファイナンスの本も必然的につまらなくなってしまった。」

「今日のファイナンスのつまらなさは、企業の財務活動から全ての人間的なダイナミックな側面を捨象し、あらゆるものを数学の世界に還元してしまったことにある。」

 

ファイナンスがつまらないかどうかはおいといて、つまりは、自然現象ではなく人間が作り出した社会システム(例えば、経済学)に関して科学を応用すると、科学のフィクションとしての側面が強調され過ぎて、人間の人間らしさの部分がついていかない、という指摘。

物理や数学のような学問は、論理的な整合性だけで突き進むけど、経済みたいに人間が絡んでくるとそれだけでは説明できないとして数学的な理論をアジャストすべし、というのは肯定的だけど、とはいえ、あってる間違ってるだけでいけば、あってるんだから、例え人間の直感に反する結果であっても人間が論理に寄り添うという選択もあるのでは。科学が自然現象を表現できるとするならば、論理が自然であると言えなくはない。人間の身体的な進化のスピードが知性的な進化のスピードに追いついていないだけという逆の見方をあえて。

テクノロジーはまさに科学だから、最近のテクノロジードリブンなサービス設計にどこまで人間的な要素を取り込むか、みたいな話とも関係しそう。

心理学やら脳科学やらがフィーチャーされがちだけどそういうのを全く無視した技術オンリーで、人が理解しがたい、けれども、超最先端の理論の裏づけがあるカッティングエッジなサービスはないものか…フィンテック、ブロックチェーンあたりはそれかもしれない。金融以外は?

参考

トーマス・カリアー「ノーベル経済学賞の40年 20世紀経済思想史入門」
堀内勉「ファイナンスの哲学―――資本主義の本質的な理解のための10大概念」

補足

ミヒャエル・エンデ
「問題は全科学が自負する客観性なのです 。私はこの客観性には異論があります 。ナイ ーブな基本姿勢に思われます 。その結論では自然科学とその一連のものが計測 、計算できるものだけを現実として認めるということです 。それは現実のあくまでも一部であり 、もしかしたら最も重要な部分でさえないかもしれないわけです 」